「親名義の土地に自分の家を建てて住んでいる」人の注意点

「土地は親の所有で建物(家)は子(自分)の所有」の場合に気を付けた方が良いこと

 日本では「親名義の土地に子が家を建てる」というケースは多くあります。

 「土地代金が必要ない」「建築に集中できる」など大きなメリットがあります。

 しかし、このケースは親の認知症や相続といったライフイベントが重なると,思わぬトラブルに発展しやすい構造を持っているので注意が必要です。

 本記事では親名義の土地に家を建て住んでいる方が,どのような問題に直面しやすいかを「生前~認知症発生~相続発生」と時系列ごとに整理をし解説します。

Information

「家を建てたのだから敷地である親の土地は当然に自分のもの」とはならない

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相続発生時には敷地である親名義の土地は相続財産となり,原則として平等に分ける対象となる

例えば,次の事例のような「相続によって敷地が他人と共有になる」といったケースもあります。

実例:相続後の土地共有持分の売買

賢い@不動産屋

あなたの家の敷地の持分をご兄弟の方から購入しました。


今後あなたの家の敷地は私どもとあなたとの共有となります。

親の土地に家を建てた子

この土地は先祖代々,私の家の土地のはずですが・・?

(あなたならこのような事態になった場合、どのように対応しますか?)

段階によって対策変わる。まずは問題点の確認を

親名義の土地に家を建ててからの段階ごとの問題説明図。生前~認知症発生~相続発生の段階。

問題整理のためにも,段階を追って注意すべき点を記載します。

相続発生前(生前)の段階に確認したいこと

「親の土地に子が家を建てた場合」に相続が発生する前の段階(生前)で確認しておきたいことは次のような点です。

親に賃料(地代)等は支払っている?

「親に賃料(地代)を支払っているかどうか」は土地を借りている権利の強さに影響するため,重要な確認事項です。

◆賃貸借か使用貸借かの違い

 土地を借りている権利は,賃貸借による賃借権か使用貸借による使用借権かで強さが異なります。

 例えば,親に賃料(地代)を支払っていない使用貸借の場合は借地借家法は適用されません。

賃借権(賃貸借契約)使用借権(使用貸借契約)
賃料ありなし
借地借家法の適用あり(借主が強く保護される)なし(原則として適用されない)
契約の存続期間契約で定めた期間(最長30年)
※更新可能
土地を返還する時期を定めた時はその時まで,定めないときは契約に定めた目的に従い使用収益を終えた時まで
※借主の死亡によって終了するので注意
相続貸主・借主ともに相続できる貸主は相続できるが,借主は原則として相続できない

 なお,賃料(地代)が固定資産税額程度の場合には賃貸借ではなく使用貸借とみなされる場合もあるので注意が必要です。

◆使用借権(使用貸借)のデメリット

 親に賃料(地代)を支払っていない使用貸借の場合は,次のようなデメリットがあります。

  • 借地借家法が適用されない
  • 自分が親より先に亡くなった場合はどうなるかを確認
  • 相続時の相続税評価が原則として自用地となるため高い
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使用貸借の場合は①借地借家法の適用がない②相続時の相続税評価が自用地となるなどのデメリットも。


 この他に,相続人となる兄弟がいる場合には相続の際に,敷地である土地を無償使用していた分が特別受益にあたるとみなされる場合もあります。

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兄弟がいる相続で使用貸借の場合は,使用収益した分として特別受益を考慮する場合も

親子間で土地の契約書などは作成している?

 親名義の土地に家を建てて住んでいる場合,親子という間柄もあって「土地についての契約書を作成していない」というケースが少なくはありません。

 もちろん,日本では口頭でも賃貸借契約や使用貸借契約は成立します。

 しかし,契約の当事者の一方であった親が亡くなり相続が発生し,書面化された契約書が無い場合には,次のような点が不明なため,問題化する場合があります。

  • 敷地として親名義の土地のどの部分を借りる内容であったのか?
  • 敷地である親名義の土地は本当に賃貸借であったかのか?
  • 賃料の額は具体的にいくらであったか?固定資産税程度の額ではなかったか?
  • 土地を借りる契約の期間はいつまでか?
  • 条件のようなものは無かったか?

 土地に関する約束事は長期にわたることが多いので,契約書が無い場合には,上記のような不明な点を証明することは難しくなります。

 この場合,相続人が自分だけはでなく,兄弟がいる方は特に注意が必要です。

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書面を作らず放置するリスク①口約束は残らない②証拠が残らない③主張できなくなる

土地に住宅ローンの抵当権が設定されている?

 家を建てる際に住宅ローンを利用した場合は,「建物だけではなく敷地である土地にも担保として抵当権が設定されている」ケースが多いです。

Information

住宅ローン利用時には建物だけでなく,敷地である親の土地にも抵当権設定がなされる

この場合には次のような点に注意が必要です。

  • 敷地となり抵当権設定された親名義の土地は,所有者である親は自由に処分できない
  • 住宅ローンの返済が滞ると,住まいである建物だけでなく,敷地である親名義の土地も競売になる

◆近年多い『ペアローン』と『敷地が親名義の土地』の組み合わせの注意点

 「敷地は親名義の土地で,建物の建築について住宅ローン(夫婦ペアローン)を選択した場合」は離婚時や相続発生時には特に注意が必要です。

 この場合,建物は夫婦の共有であっても,敷地である土地は一方の親の土地です。あるいは相続が発生すると敷地が兄弟の共有となることも想定されます。

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ペアローンの場合は離婚時と相続発生時は特に注意が必要

土地の固定資産税評価額や路線価等は把握している?

 親名義の土地に家を建てた場合は,①土地の名義を移転する登記を行わない②固定資産税の通知は所有者である親に届くため,積極的に確認しない限り固定資産税の評価額等を知る機会がありません。

 また,③相場を真剣に検討する機会になる売買を行っていないので,相続税の路線価についても知らない場合も多いのではないでしょうか。

 この場合に,相続発生後に「賃貸借契約書を作成しておくべきだった」「名義を移転しておくべきだった」という事態になることは少なくないので注意が必要です。

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使用貸借契約の場合は,自用地扱いになるので注意

親が認知症になった場合や相続が発生した場合のことは考えている?

 上記のような問題点は,相続開始前(親の生前)であれば,賃貸借契約書の作成・贈与・売買・遺言作成など様々な対策を講じることが可能です。

 しかし,敷地である土地の名義人である親が認知症になった場合には,取れる対策が少なくなってくるので気を付けなければなりません。

 また,相続発生後においては,共有などの別の問題が発生する場合もあるので注意が必要です。

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親が認知症になった場合や相続が発生したあとは注意が必要

親が認知症になった場合に確認しておきたいこと

親が認知症になってからは法律上重要な行為が行えなくなるので,次のような問題が生じます。

遺言の作成が困難になる

相続の対策として遺言書を作成することが有用ですが,遺言を作成するには本人に判断能力が必要です。

認知症になった場合,認知症の程度の問題もありますが,遺言の作成は困難になります。

敷地である土地の贈与や売買ができない

 親が認知症でない元気なうちであれば,敷地である土地を贈与や売買によって名義移転するといった対策を取ることも可能です。

 しかし,親が認知症になってしまってからは土地の売買契約や贈与契約を行うことができなくなります。

Information

敷地である土地は賃貸借のほか,親から子への売買や贈与も可能

成年後見制度では柔軟な対応ができない

 「親が認知症になった場合,成年後見制度を利用することによって不動産の売却ができる」という話を聞いたことがある方は少なくないかもしれません。

 しかし,この成年後見人制度は事前に準備しておかない限りは,後見人が選ばれるまでには数カ月の期間がかかり,また,費用の発生や各種の制限もあります。

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認知症になったらできることに制限があります。

相続発生の後の場合に確認したいこと

相続が発生した後の場合は,次のような点を確認すべきです。

敷地である土地が自分単独所有の場合

 相続発生後,法定相続人がいない場合や遺産分割協議によって敷地である土地を自分単独の所有となった場合はあまり問題はありません。

敷地である土地が共有となった場合

 次の図のように,相続後に敷地が兄弟の方などと共有の状態になった場合は,これまでと異なった問題も出てくるので注意です。

遺産分割協議前などに土地が共有になった場合には次の点を確認ください。

  • 敷地である土地は賃貸借?使用貸借?
  • 敷地として借りていた土地面積と範囲について
  • 敷地である土地が共有になったリスクについて

共有である場合は自由に持分を処分できるので,相続後の土地共有持分の売買という場合もあります。

敷地は賃貸借か使用貸借かどうか

 敷地である土地を借りる権利が賃借権か使用借権かで①借地借家法で守られるか②相続によってどのようになるかなどが異なります

 詳しくは上記を確認ください。

敷地として借りていた土地の面積と範囲について

 賃貸借契約書や使用貸借契約書に対象となる土地の面積が示されている場合や,明らかに1棟しか建たない広さの土地の全部を敷地として使用している場合は関係がありません。

 しかし,「家が数棟建つような広さの土地」や「親の家の隣に建てていた」場合などは「どの部分を家の敷地として借りていたか」は,ぜひ確認をしてください。

 相続に関連して納税や遺産分割をする場合、あるいは敷地を分割して売却する場合などは時間がないことが多く、敷地の大切な部分を売却してしまったために後々問題が発生するといったこともあります。

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相続後の納税や遺産分割のために,敷地を分割して売却をする場合は注意!後々「再建築不可」になってしまう場合もあります。

敷地が共有の場合の問題点

 敷地が共有となった場合は次のような点に注意です。

  • 単独では土地全体を売却できない
  • 持分は自由に売却できる(ただし安め)
  • 共有者の認知症リスク
  • 世代交代でさらに共有者は増える

 例えば敷地である土地が自分と兄弟の2分の1ずつの共有となった場合,兄弟は土地の所有権の2分の1の持分を自由に売却することが可能です。

その結果、冒頭のように第三者がその持ち分を購入しあなたと共有すると言う事態に発展する場合もあります。

Information

共有の場合は共有者はその土地の共有持分を自由に処分できる。

対策:親名義の土地に子が家を建てた場合

 「親名義の土地に自分の家を建てる」ということは素晴らしいメリットがある反面,上記のような問題点は多くあります。

 これらの問題を避けるため「どのような対策を講じるべきか」段階ごとに,実務事例を交えて次のページで解説します。

「対応策について」はこちらのページへ

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