建築物の「確認済証」と「検査済証」の違い

「確認済証」と「検査済証」のどちらが重要な書類かわかりますか?

ホーム » 売主様向け記事 » 建築物の「確認済証」と「検査済証」の違い

不動産売買時に大切な「検査済証」と「確認済証」

 建物付きの不動産を売買する際に資料として求められることの多い「確認済証」と「検査済証」の違いについてまとめてみました。

【要点まとめ】「確認済証」と「検査済証」について

時間のない方は【要点まとめ】のみをチェック!

要点まとめ:確認済証と検査済証

  1. 「確認済証」・・・建築工事建築基準法等に適合するものであること確認を受けた書類
  2. 「検査済証」・・・建築工事完了後検査を受けて建築基準法等に適合しているときに交付された書類
  3. 検査済証」が無い!?・・・戸建ては無い場合が多い(特に2000年以前築の建築物)
  4. 「確認済証」も「検査済証」も“過去の証明書類”・・・現時点の状況が大事

「検査済証が無い」という場合は多い

 完了検査を受けた証である「検査済証」実務の感覚では言えば,一戸建てなどは1990年代までの建築物については「検査済証が無い」という場合が多いのではないでしょうか。

 理由は,「検査済証」を交付されるために必要な「工事完了検査」を当然のように受けるようになったのが,2000年代後半以降のためです。

【実例FAQ】 「確認済証」と「検査済証」

 建物付き不動産の売買や活用のご相談時に「確認済証」と「検査済証」について実務でよくあるお話をまとめてみました。

購入検討中の方

「検査済証」が無いから見送ろう…。良い戸建っぽいけども…。

売主様

この前捨ててしまった書類が「検査済証」だったかも…

「確認済証」と「検査済証」の違いは何ですか?

一言で言えば,「確認済証」は工事着工前の書類,「検査済証」は工事完了後の書類です。

「確認済証」があればこの建物は現在,建築基準法上は適法な建物と言えるのですね?

全くそのようなことはありません。

「確認済証」があるということは,建築工事着手の前に建築基準法等の法令に反していないことが「確認」ができただけです。①建築工事中に申請した内容と違う工事を行っている場合や,②完成後に違法な増改築がされている場合があります。

 また,①②共にしばしばあります…。

 例えば,木造2階建てで言えば,確認申請時の図面では屋根裏になっている部分が,人が建てる高さのロフトになっている場合などがあります。

「検査済証」があればこの建物は現在「建築基準法上適法な建物」なのですね?

全くそのようなことはありません。

「検査済証」発行後に違法な増改築を行った場合には「違反建築物」と言えます。

 しばしばあります…。

 例えば,完了検査後にガレージなどをつぎ足し増築し建蔽率や容積率オーバーになっている場合などがあります。

「検査済証が無いと住宅ローンが使えない」とネットで見ました。

たしかに,新築の建物の場合は,検査済証が無いと住宅ローンの融資実行まで進めませんので,住宅ローンの利用ができないと言えるかもしれません。

しかし,中古の建物を購入する場合は,代用書類として「台帳記載事項証明書」を提出するなど住宅ローンの利用が可能となるケースなど,実際に融資実行まで至る場合は多々あります。

(なお,「検査済証が無い」という建物は実際に築年数が古いものが多く,それゆえに融資を利用しにくいという点も多分にあると思います。)

「完了検査を受けなかった理由」はどのようなことが考えられますか?

まず,大手デベロッパーが分譲するマンションと異なり戸建住宅2000年代前半までは完了検査を受けていない割合が多いのは事実です。

実際1990年代は建築物の6割が完了検査を行われていません(国交省データから)。

そして,完了検査を受けなかった理由としては,次のようなことが考えられます。

(1)2000年代前半までは「完了検査を受けずとも不利な部分は少なかった」逆に言えば「完了検査を受けても得することはなかった」 ※正確に言えば,2000年ごろより,完了検査を受けた方が得になるような制度になってきています。

(2)施主(建築主)が工事完成を急いでいたケース・・・完了検査を受ける場合,検査日程の調整等で2~3週間前後の時間が発生する場合があります。工程の段取りや融資の利用等でできるだけ完成を急ぎたい場合ということはよくあります。

(3)施主が(建築主)が「確認済」後の建築工事中などに変更を希望したケース・・・建築確認後に間取り等を一部変更するなどの場合です。「この壁は取ってしまおう」などの場合です。

【詳しく】 「確認済証」と「検査済証」について

「検査済証」と「確認済証」について詳しく説明します。

(1)建築物が完成するまでの流れ

「確認済証」や「検査済証」は建築物の工事を行う際の一連の流れと深く関わるため,まず,建物の建築の流れを説明します。

建築の計画など

これから建築をしようという計画を立てます。

STEP
1
建築確認申請と「確認済証」
  •  建築主は,一定の建築物を建築(増改築を含む)する際には,建築工事に着手する前に,建築の計画が建築基準法等に適合している旨の確認を受けなければなりません。この「確認」のことを「建築確認」と言います。
  • この確認は建築主事または指定確認検査機関に対して申請を行います。
  • 上記「確認」の後に交付されるのが「確認済証」となります。
STEP
2
着工

確認済証が交付されたら工事に着工できます。

STEP
3
(中間検査)
  • 階数が3階以上の建築物などは,中間検査を受けなければなりません。(自治体により中間検査を受けなければならない対象が異なります。)
  • この「中間検査」合格後には「中間検査合格証」が発行されます。
STEP
4
工事完了

工事が完了したら完了検査を申請します。

STEP
5
完了検査と「検査済証」
  • 工事完了後に完了検査を受けできあがった建築物が建築基準法等の法令に適合している場合には「検査済証」が発行されます。
STEP
6
引き渡し

建築物が引き渡されます。

STEP
7

(2)「確認済証」について

ⅰ 「確認済証」とは

 建築工事に着手する前に,建築主事または指定確認検査機関建築の計画が建築基準法等に適合している旨確認した証の書類です。

ⅱ 「確認済証」の実物

 下記が実物の「確認済証」です。
 
 お手元の書類が「確認済証」かわからない方下記画像の赤囲み部分のように「確認済証」と書かれているものが「確認済証」です。

確認済証の見本
指定確認検査機関の確認済証
ⅲ 「確認済証が無い!」

 「確認済証が無い!」という建築物①「非常に危険」なパターン②「あまり問題ではない」パターン結果が極端に異なるのでご注意を。

「確認済証が無い!」理由

  • 確認済証を紛失したパターン・・・なんとかなります。→自治体の
  • 完全なる違法建築物のパターン・・・非常に危険!です。
  • 都市計画区域外のエリアでの建築など,確認申請が不要なパターン・・・※あまり問題はありません
ⅳ 「確認済証が無い!」という場合に行うこと

 まず,建築物の建てられた自治体の建築係などに行き,「台帳記載事項証明書」を確認ください。

(3)「検査済証」について

ⅰ 検査済証とは

 建築基準法で定められた「建築確認」(場合により「中間検査」)「完了検査」のすべて完了し,その建物が建築基準法等の法令に適合していることが認められたときに交付される証の書類です。

ⅱ 検査済証の実物

 下記が実物の「検査済証」です。

 お手元の書類が「検査済証」かどうかわからない場合は,下記を参考にどうぞ!
 下記画像の赤囲み部分のように「検査済証」と書かれている書類が「検査済証」です。

検査済証の見本
指定確認検査機関の「検査済証」
ⅲ 「検査済証が無い!」

「検査済証が無い!」理由

  • 紛失(捨てた)パターン・・・以前は郵便はがき大の粗末な紙のため捨てられた場合が多い。
  • 完了検査を受けていないパターン・・・完了検査を受ける割合が80%を超えるのは2000年代後半。90年代は40%も完了検査を行っていない。※国交省データより

 この大事な「検査済証」・・・実は「検査済証が無い!」ということが非常に多いのです。

 実務で言えば90年代の建築物(戸建)の「検査済証」はほとんど無いような印象があります。

ⅳ 「検査済証が無い」理由その1:紛失(実際は捨てた)パターン

 紛失の場合,実際は「検査済証を捨てた…」という場合が多いのではないでしょうか。

 2020年代の現在「検査済証を捨てた」というと「重要書類をなぜ捨てるのか?検査済証を捨てるような不動産所有者,この人本当に大丈夫か?」と思う方もおられるやもしれませんが,実はこの検査済証,以前は郵便はがきのサイズの極めて粗末な書類でした。

 昔の検査済証は上記実例のようなA4サイズの透かしの入った現在のものではありません。ホッチキスで数枚の紙と共に綴じられた郵便はがきのサイズの紙に書かれたものが昔の「検査済証」でした。

 その郵便はがきサイズの紙の「検査済証」は年月とともに茶色くなり…。「登記済権利証」と異なり,処分される方が多い印象があります。

 

ⅴ 「検査済証が無い」理由その2:完了検査を受けなかったパターン

「完了検査を受けなかった」パターンは次のような場合があります。

(1)2000年代前半まで「完了検査を受けなくてもさほど不利なことはなかった」逆に言えば「完了検査を受けても得することはなかった」 ※正確に言えば,2000

(2)施主(建築主)工事完成を急いでいたパターン
  完了検査を受ける場合,検査日程の調整等で2~3週間前後の時間が発生する場合があります。工程の段取りや融資の利用等でできるだけ完成を急ぎたい場合ということはよくあります。

(3)施主(建築主)確認申請後の工事中などに変更を希望したパターン

 建築確認後に間取り等を一部変更するなどの場合です。「この壁は取ってしまおう」などの場合です。

ⅵ 検査済証が無いと困る点

 検査済証が無いと困る点は下記のとおりです。

検査済証が無いと困るケース

  • 防火地域・準防火地域での増築をするとき
  • 10㎡以上の増築をするとき
  • 200㎡以上の用途変更をするとき

(4)「確認済証」「検査済証」も過去の一時点での証明書類。現在での適法性を証明するものでない点には注意



 「確認済証」は建築確認申請時点における建築基準法等の法令に適合していることを,「検査済証」は工事完了時の証明に他なりません。

 逆に言えば,工事完了後や確認申請後に,建築基準法等の法令に適しない形で工事を行ってしまえば,「確認済証」があることも「検査済証」があることも,意味がなくなってしまいます。

 そして実際にそのようなパターンの建築物は多くありますので,ご注意を。

確認済証・検査済証があってもその後に変更されているケース

  • 検査済証はあるが,その後に敷地を分筆して売却したために建蔽率オーバーとなった建物・・・違反建築物です。
  • 検査済証はあるが,その後に敷地を分筆したために接道不可となった建物・・・再建築不可です。
  • 検査済証はあるが,その後に増築がなされ容積率オーバーとなった建物・・・違反建築物です。
  • 確認済証は2階建ての木造だが,なぜか大人が立てるようなロフトが設けられている建物・・・違反建築物の可能性があります。

以上のようなケースは実務ではよく目にします。

中古の建物付き不動産を売買・活用しようという場合には,「検査済証」「確認済証」ともに一つの資料であって絶対のものではないという点にご注意を。

  • X
ホーム » 売主様向け記事 » 建築物の「確認済証」と「検査済証」の違い

しつこいセールスは行っておりません。お気軽にご相談ください。03-5324-2800受付時間10:00-20:00 [ 水曜定休]

ご相談フォーム クリックして簡単な入力でご相談

建築物の「確認済証」と「検査済証」の違い” に対して1件のコメントがあります。

コメントは受け付けていません。